ミトコンドリア腎症(ミトコンドリア病が関与する腎疾患)についてのご相談受付このページを印刷する - ミトコンドリア腎症(ミトコンドリア病が関与する腎疾患)についてのご相談受付

 「ミトコンドリア腎症:mitochondrial nephropathy」とは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)もしくは核DNA(nDNA)の変異を原因としてミトコンドリアの呼吸鎖複合体による酸化的リン酸化(OXPHOS)経路が障害され発症する腎疾患と言い表すことができ、いわゆるミトコンドリア病に含まれるものです。

そして大事なのは、現在、ミトコンドリア病に対する創薬や治療薬の治験が進んできており、一部のミトコンドリア腎症は治療可能となってきていますのでしっかり診断をすることがとても重要になってきた点です。

 腎においてミトコンドリアが最も多く存在するのは尿細管(特に近位尿細管)であり、糸球体内の細胞においては糸球体上皮細胞においても比較的多くのミトコンドリアが観察されます(1)。「ミトコンドリア腎症」は、そういったミトコンドリア数が多い尿細管でのFanconi症候群等の尿細管機能障害や、糸球体上皮細胞障害による巣状分節性糸球体硬化症(focal segmental glomeruloscleosis: FSGS)やステロイド抵抗性ネフローゼのような腎症を引き起こすことが知られています。下の表には、これまでに報告された遺伝性FSGS、先天的ステロイド抵抗性ネフローゼの原因となるミトコンドリア関連遺伝子を示してありますが、まだ知られていない遺伝子異常もあり、これからの解析により更に多くのミトコンドリア腎症の原因遺伝子が明らかになっていくことが予想されます。
変異DNA種 遺伝子
mtDNA - mtDNA単一欠失
mtDNA MT-TI tRNAIle (AUU/C)
mtDNA MT-TL1 tRNALeu(UUR)
mtDNA MT-TF tRNAPhe (UUU/C)
mtDNA MT-TY tRNATyr (UAU/C)
mtDNA MT-TN tRNAAsn (AAU/C)
mtDNA MT-ATP6 Complex V subunit
mtDNA MT-CO1 Complex IV subunit
mtDNA MT-ND5 Complex I subunit
nDNA RRM2B mtDNA多重欠失
nDNA COQ2 CoQ10合成
nDNA PDSS2 CoQ10合成
nDNA COQ6 CoQ10合成
nDNA COQ8b CoQ10合成
表には、これまでに報告された遺伝性FSGS、先天的ステロイド抵抗性ネフローゼの原因となるミトコンドリア関連遺伝子を示してありますが、まだ知られていない遺伝子異常があると考えています。

次のような場合、ミトコンドリア腎症を疑う

1.遺伝性の腎疾患(+糖尿病)
2.低出生体重や低身長あるいはmental retardationを伴う巣状分節性糸球体硬化症(or 腎硬化症 or glomerular obsolescence)
3. 高乳酸血症や血中乳酸/ピルビン酸比が20以上
4. 腎生検が行われている場合には、病理組織型は、巣状分節性糸球体硬化症(or 腎硬化症 or glomerular obsolescence)などを呈する。糸球体上皮細胞での異常ミトコンドリア集積や、遠位尿細管や集合管においてミトコンドリアが細胞内に集積して細胞が腫れ上がって見えるgranular swollen epithelial cells (GSECs)を認める(図)。GSECsは移植腎や高齢者でも認めら得ることがあるため、注意を要する。管腔側に飛び出すように腫脹しているかどうかが重要なポイントとなる。
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ご相談の受付

現在、日本医療研究開発機構(AMED)の 難治性疾患実用化研究事業「多様なミトコンドリア病の遺伝子型/表現型/自然歴等をガイドラインに反映させていくエビデンス創出研究」班(令和2年4月~令和5年3月)(研究代表者 千葉県こども病院代謝科部長 村山圭先生)と連携し、ミトコンドリア腎症の診断ができる体制作りに取り組んでいます。診断のため、日本人に認められるnDNA変異約130種類とmtDNAの点変異、欠失を含むミトコンドリア病の遺伝子診断パネルを用いた次世代シークエンサー解析を行いますが、新規の変異が考えられる場合などは、whole exome sequencingやwhole genome sequencingを施行する場合もあります。ミトコンドリア腎症を疑う症例がありましたら、お気軽に、ご連絡ください。
連絡先 国立病院機構千葉東病院 今澤俊之

imasawa.toshiyuki.qh@mail.hosp.go.jp

Imasawa T, Rossignol R. Podocyte energy metabolism and glomerular diseases. Int J Biochem Cell Biol. 2013 Sep; 45(9):2109-18